西村明穂

クラリネット

4歳よりピアノを始める。11歳より部活動にてクラリネットを始める。

14歳でダイエットに専念しすぎ、3ヵ月でうっかり15キロ痩せる。あまりの激変にひどく親を心配させ、他の習い事(習字)をやめさせられる。それでも懲りない現状に見かねた母による、「体重戻したらクラリネット習わせてあげる」という狡猾な作戦に、見事ひっかっかる。

無事まるまると太り、15歳より本格的にクラリネットを習いはじめる。

17歳より本気で音大への進路を考え始め、東京へ通い始める。初めての東京のレッスンで、「ちゃんと考えてから吹きなさい」というありがたいお言葉に頭を悩ませる。「考える」こととは何か、四六時中「考え」始める。まだ「考え」られていないので、楽器が吹けなくなる。クラリネットの前で、ただ「考える」ことにより10時間過ぎる毎日が続く。3ヵ月ただ「考え」続けた結果、楽器が吹けない自己暗示にかかり、本当に楽器にさわれなくなる。

18歳、クラリネットが吹けなくなり大切なもの全て失う。また泣くほど心配する親お構いなしに、クラリネットが置いてあるグランドピアノの下の暗闇で 「考える」ことの意味とその内訳だけを「考える」生活を続ける。「考える」ことの魔物に憑りつかれ、受験期間の半年間、完全に廃人になり、絶望のどん底までつき落ちる。

受験前日、急に使命感と義務感に駆られ、徹夜漬けで突貫工事と言わんばかりの久々の練習をし、泣きながら東京に向かう。しかしそのエネルギーも束の間、はかなくも受けた音楽大学3つすべて失敗する。それまで完全に社会的に生きる気力を失っていにもかかわらず、「考える」ことを一瞬忘れて、久しぶりに「悔しい」という貪欲な感情がみなぎったことに驚く。とある私立大学にたまたま補欠で繰り上がってしまい、強制的に東京へ送られる。生活がすべて変わり何かから解放される。外の世界の美しさを知る。「考える」ことの魔物と共存しながらも、なんとか這い上がろうと試みる。社会的に死ぬ苦しみよりも、もがき這い上がりたいという欲望を持つ苦しみに気付く。発狂しながらも、なんとか女子音大生をエンジョイし始める。笑うという現象を思い出す。

そして今、なぜ私はパリにいるのか。

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